ヒーロー物語 2010/07/31__02:11

えーと、半年ぐらい前に友人と話していた話です。

「現代の日本にヒーロー物語は必要なのか？」
簡単に言うと、これがテーマです。

背景を整理すると、以下の2点です。

・一般論として、若い社員の仕事に対するモチベーションが
低いことや、仕事に対する提案・改善努力をしない等々。
（いわゆる「近頃の若いもんは…的」なもの）
・以前は、ヒーロー像が出世や報酬の増加のシンボルになっていた。

ここから本筋

彼女曰く、
「現在の日本において、仕事を頑張ることが、出世や報酬の
増加とリンクしていないので、ヒーロー物語を作ったところで、
それにのってくるバカはいない」

言われてみれば、その通りなんですが、そもそも、どんな組織でも
基本的に頑張りを評価するというより、獲得した売上の中に、報酬
がある訳で、売上が極端に少ないと報酬を下げざるを得ないし、
行政組織やそれに類似する組織の場合、そもそも売上がない中で、
税収や補助金に頼っているわけですから、頑張るかどうかなんて、
報酬とリンクしていないのが常なはずです。

この前提は、数十年前の高度経済成長下でも、同様のことが言えます。

ただし、売上・税収が上がっている場合、報酬や出世とリンクさせる
ことは可能なので、そういう時代だったからこそ、「努力すれば、
ヒーローになれるかも」という幻想は、強力に働いたのかもしれません。

で、現代に戻ると、頑張ってもヒーローみたいになれないし、頑張った
ところで、売上が下がる時は下がるし、売上落ちれば、給料があがらな
いか、下手すりゃ人員整理にもなる。

要は、ヒーローになろうと思ってもなれないという現実の壁があるから、
ヒーローなんて要らないという、お話でした。

彼女の話を、逆に言えば、出世や報酬とリンクする限りで、ヒーロー物語は
まだ使える道具だということになります。

さて、ここで僕が思ったのは、「ヒーローって妄想の一種じゃねーのか」
っていうのは、まだマイナーな主張なのかなという疑問です。

歴史上の偉人が凄くないっていうことをいいたい訳ではないのですが、
物語のかなりの部分は、デフォルメされてるだろうという理解です。

というのも、どんな偉業でも一人でできるものなんて、ほとんどないだろう
と思うからです。

典型的なストーリーだなと思うのは、プロジェクトXを立て続けに１０話
ぐらい見れば分かると思います。

最初は小さな困難を克服して順調に成果を上げていく
↓
そんな中、突然に会社の屋台骨を揺るがすような大きな困難がやってくる
↓
そこで悪戦苦闘しながら、業績は下がる一方。
↓
勝利の女神が、都合よく、手を差し伸べてくれて、逆転大成功。

ということは、ヒーローに象徴されるようなスーパーマン的特殊能力
（勝利の女神を味方につける）なんて想定すること自体がナンセンス
なんじゃないのかということになります。

というのも、ヒーローなんて結果ありきなので、結果の出ているところ、
企業だと売上、スポーツだと記録をみて、誰をヒーローにするかを決めて、
先ほどの物語構成に沿って、初期の小さな困難と中期の大きな困難を
聞き出し、手助けをしてくれる勝利の女神（人の場合もあれば、モノの場合
もあると思います）を加えれば、ヒーローが誕生することになりそうです。

ヒーロー物語は、
「自分がヒーローになれるとは思わないけれども、誰か別の人が
（スーパーマン的）ヒーローになってくれれば、自分は楽できるのに」

とか、

「ヒーローになるために、頑張れ！」っていう、裏側が腐ったにんじんの
表側に釣られて、食ってみたら食中毒になった

っていう、２つのオチの元凶になってるんじゃないかなと思います。